現状
beatmania IIDXにおいては、12段階のレベル表記と800曲近い量の楽曲が存在している。
まずは、他機種と1レベルあたりにどれくらいの譜面が存在するのかを比較してみたい。(難易度表記が煩雑なギタドラを除く)
他機種との比較
機種 | レベル数 | 譜面数 | 1レベルあたりの譜面数 | 注記 |
IIDX | 12 | 2220 | 185 | SP譜面のみをカウント。BEGINNER譜面102種は含まない |
DDR | 19 | 2154 | 113.3 | SP譜面のみをカウント。Lv20は存在しないためレベル数19とした |
jb | 10 | 636 | 63.6 | 入れ替えによる現行譜面数のみをカウント |
rb | 11 | 693 | 63 | |
pm | 50 | 2665 | 55.8 | EASY譜面125種を含む |
SDVX | 15 | 423 | 28.2 |
こうして見ると、IIDXは圧倒的に1レベルあたりの譜面が多いことがわかる。さらに、IIDXの場合はLv1〜2がほとんど使用されていないため(Lv2は16譜面、Lv1に至っては5譜面しかない)、これらを省いて考えると、実質1レベルあたり220譜面近くが存在していることになる。
DDRも1レベルあたり100譜面を超えているが、Lv別表示でもBe,Ba,Di,Ex,Chと譜面種ごとに表示が分かれているため、体感としてはこの半分程度であろう。
リフレクは3作目と発展途上の機種であるため、11段階でちょうどいい譜面数になっている。Lv1にも23譜面と十分に譜面を割いていることも特徴と言える。
指では200曲前後に抑える定期的な曲の入れ替えが功を奏し、1レベルあたりの曲数は妥当なラインに落ち着いている。(Lv1が現在5譜面とほとんど死にレベルであることを考えればもう少し上がってしまうが)
ポップンでは50段階の詳細なレベル表記を用意することで1レベルあたりの曲数を他機種並に抑え、プレイヤーに見やすさと着実なステップアップの達成感を与えていることは評価されていいだろう。ただしこれは詐称・逆詐称議論の原因ともなっている。
さて、こうした状況ゆえ、現在のIIDXにおいては多すぎる譜面と少なすぎるLv分けのため、
- 目的の曲を探すことが困難
- 一つのレベルを埋める流れが長期化して「作業」となることでモチベーション低下に繋がる
- レベル内における難易度格差で初心者〜中級者を途中落ちさせる原因となって、実力に見合ったレベル帯の譜面のプレイ量が減少し実力の停滞に繋がる
などの弊害が考えられる。
近年はクリアレート順ソートによって多少なりとも軽減されているとは言え、特にコアなレベル帯である☆8〜☆10を中心にプレイする六段〜八段層に強く影響を及ぼしていると考えていいだろう。
対策案
さて、こうして各機種を見てみたが、IIDXではどのような方策を用意できるだろうか。他機種を参考にいくつか考えたい。
- 譜面種ごとに表示を分ける
DDR方式。妥当な案ではあるが、N譜面からH譜面、H譜面からA譜面への移行が遅くなるデメリットも考えられるだろう。また、一覧性の点では劣る。
- 曲数を減らす
指方式。スタッフ側が作為的に曲数やバランスを調整できるメリットはあるが、版権の多い指とは異なり曲目のほとんどがオリジナルで多くの曲数を収録可能な中でわざわざ大規模な削除を行えば、プレイヤーからの反感を買う可能性は高い。
- レベルを細分化する
ポップン方式。多くのレベルを用意することで、プレイヤーが適正な難易度の曲をプレイしやすくなるメリットがあり、プレイヤーの観点からは最も望ましいが、現状の大雑把な表記でさえ詐称・逆詐称を起こすスタッフにはたしてこれ以上細かい難易度調整が可能かは疑わしい。また、以下に示すように、クリアゲージの点からも問題がある。
レベル細分化とクリアゲージ
音ゲーマーならおわかりのように、音ゲーの難易度とは「何を指標にするか」によって著しく異なってくる。初回クリアか、クリアの安定度か、コンボの繋ぎやすさか、スコアやランクの出やすさか。譜面の傾向による個人差の問題も大きいが、ここでは取り扱わない。
ここで、他の機種であれば基本的には「初回クリア」を基準にしていると考えられるが、IIDXにおいてはその「初回クリア」でさえグルーブゲージと呼ばれるクリアゲージに複数の種類が存在し、議論を複雑化させている。
複数のゲージのうちどれをレベルの基準として反映させるかによって曲の間の相対的な難易度は変化する上に、他の種類のゲージでプレイした際に参考にならないケースが出てくる。HARD推奨のラス殺しや、逆にノマゲ推奨の局所難などである。大味なレベル設定は、ある意味このギャップを緩和できるメリットもあるのだ。
グルーブゲージを一覧すると、次のようになる。(段位認定ゲージ各種、今作で存在しないEXPERTゲージ各種は除く)
- 通常(ノマゲ)
- EASY
達成型ゲージ。これらは増加量が非常に高く、曲によるが200〜300ノート程度コンボを繋げば2%から100%までゲージ回復可能な一方で、ノマゲではPOOR4個、EASYではPOOR5個で100%からボーダー未満に落ちてしまう。
このため、これらのゲージでの難易度においては前半〜中盤の譜面はほとんど意味を為さず、「後半数百ノートで回復orゲージ維持可能か」「ラスト数十ノートを耐えられるか」という非常に偏重したものになってしまう。これはおそらく、多くとも500ノート程度の譜面が中心だった初代beatmaniaの作りをIIDXにも踏襲した結果、中難度でも800ノート程度は当たり前、高難度では2000ノートに達するインフレ化を経て生じた弊害であろう。クリアランプが保存されるようになり、今さら基準を変えることも難しい。
ちなみにポップンやボルテのゲージの仕組みもこれらに近いが、ポップンではフィーバーからボーダー未満までBAD6個が必要とラス殺しを緩和している上、低難度では1ノートあたりのゲージ増加量がIIDXに比べ大きく、中難度〜高難度ではゲージ増加量がIIDXに比べて辛めと、初心者を保護する一方で中難度以上ではより全体の譜面が反映される作りになっている。ボルテは、詳細なゲージ増加量は不明だが、過去のシリーズを踏まえてか増加量・減少量ともに緩やかな作りとなっている。
- HARD
耐久型ゲージ。上級者のデファクトスタンダードともなっている。適度に辛いゲージによって、譜面全体の難易度が反映されやすい。一方で、ノマゲ・EASYとは難易度ギャップを起こしやすく、難易度議論の際の混乱の原因ともなっている。
- EX-HARD
HARDゲージをさらに減少量2倍にし、30%以下で減少量が半分になる補正もなくなっている。このため、癖曲に多い縦連、連皿、ソフラン、発狂といった瞬間的な難度がHARDゲージに比べより強く影響するようになっている。
- HAZARD
コンボブレイク1回で終了。そのままフルコン難度と言っていい。HAZARDモードではフルコンレートが表示される。
以上のように、「基準の違い」がIIDXの難易度決定を難しくし、現状維持を続けている大きな要因の一つとなっていると推測される。どのような形式で改善するにしろ難点を生むであろうが、そのために初心者・中級者が割を食ってしまっている現状は看過すべからざる問題ではないだろうか。